高齢化による脱路上

 

杉本 で、もうひとつ最初のほうの話に戻っちゃうのかもしれませんけど、やっぱり何だかんだ言って、人って頼っちゃうと思うんですよ。行政でも何でも。友だちがいなくてもね。最後は。僕なんかも絶対そうすると思います。で、おそらく依存したくない人でも最後は頼ると思うんですよ。それをしないで頑張るというところ。そこが何か人間のいろいろを……。

 

山内 いや。何かその、さっき話した「まだ大丈夫」という感覚で本当に拒否しているんじゃなくって、伝家の宝刀として生活保護をとっておきたいと。今はこれで何とかやっていけるから、何とかやっていけるうちは何とかやっていくというスタンスであると。その我慢強さというか、それこそ夜回りとかでずっと会う人だったんだけれども。「ちょっと最近足が悪くて歩けなくなっちゃってさぁ」という話したんですよ。「でもたいしたことねえんだけどもちょっと」、と言うから「足見せて」って見てみたら、写真を撮ったんですけど。ツメがすごいことになっていて。よく考えたらそうかという話ですけど、路上生活している時にツメを切る爪切りがない。

 

杉本 ああ、そうですよねえ。

 

山内 そうなんですよ。それでね。足を見せてご覧なさいといったらこんな状態になっているんですよ(写真を見せる)。

 

杉本 ああ、これはすごいなぁ。

 

山内 ツメだったんですよね。足が痛い原因は。足下全部。それは痛いわという話で。でもこれも夜回り前まで全然この話をしてないわけで。だから、本人が大丈夫だと言っているその大丈夫のレベルがすごい。僕らにはとうてい無理という所まで(苦笑)。

 

杉本 耐えられないレベル。

 

山内 そうなんですよね。

 

杉本 僕も言いたいのはそこなんですよ。3日だって耐えられないどころか1日だって耐えられない(苦笑)。だからこの「弱さ」ね。僕もバイト先で「もう腰が痛くって」とか言える人がさいわい、いるんですよね。

 

山内 ああ。頼るのがすごい下手なんですよね。それで損しちゃっているというか。結構威勢のいいおじさんとかで、「仕事は辞めたんだ、俺。短腹だからよ。あんな上司なんかとはやってられねえと言って出てきてやったんだ」って自慢げに、ある種得意げに話をするんだけれども、損をしているのは自分だという(苦笑)。

 

杉本 うん、うん。

 

山内 なんか人に頼るのがとても苦手。その時に「何とかして下さい」とひとついえば、何とかなったところを言えなくって路上に出てきてしまったとか。

 

杉本 はっきり言いますけど、何年間も継続的に路上生活をやっている人が多いわけですよね?本当の路上生活をやっている人たちって。

 

山内 はい。この1年がいわゆる高齢化なんでしょうかね。

 

杉本 ああ、高齢化。

 

山内 だからもう、この1年で10年選手の路上生活の人たちがバタバタと脱路上してるんです。

 

杉本 あ!

 

山内 だから「まだ大丈夫」が大丈夫じゃなくなったんですよ(笑)。

 

杉本 (笑)

 

山内 ははははは(笑)

 

杉本 ああ~。いよいよ……。

 

山内 だからもうね。ちょっと何とかしたいと言って夜回りでいつも会っていた人たちがバア~とこの1年のあいだで脱路上しましたね。

 

杉本 へえ~。みなさん、「彼も行ったから俺も」みたいなこともあったり?

 

山内 う~ん。たぶんそういうものもあると思うんですよね。あとはもう、本当に身体を壊して、路上生活できなくなってきているということなんですね。

 

杉本 もうさすがにいいか、みたいな感じ?

 

山内 このツメの人も脱路上したんですね。

 

杉本 そうなんですねえ。

 

山内 だから、杉本さんのイメージとつながるかもしれませんけど、なんでこんな過酷な状況の中で生活保護を拒否して路上生活してるんだろうかと。ところが、案外と脱路上するときは、「えっ!」というぐらいスッと行くんですよ。

 

杉本 ははは(笑)。

 

山内 これがまた面白いなと思って。あんなに僕らがどうですか?と言っていたのに。

 

杉本 なるほどね。ひとりで行くんですかね?行政に。自分からはちょっと難しいと思うんですけど。

 

山内 ああ、それはだからポロッと。「もう、ちょっと。何とかしたいんだ」と聞いて連れて一緒に行くんですよ(笑)。

 

杉本 付き添うわけですね?

 

山内 ええ。

 

 

 

「痛い」というのはすごい

 

杉本 問題は住処というか、保証人があって住まわせてくれるアパートがあればすむと思うんですけど。

 

山内 そうですね。あとは病院経由ですよね。

 

杉本 ああ、病院。

 

山内 身体壊しちゃって。病院で入院しちゃうともう路上には戻らないという。

 

杉本 戻りたくはないですよねえ。

 

山内 そういう風になるパターンと。2種類ですよね。

 

杉本 そうか。そういう意味では人間って弱くなるほうがいい、という場合もあるわけですね。

 

山内 実際「痛い」ってすげえな、って思います。

 

杉本 痛い?

 

山内 痛いのはほら、何とかしたいと思うから。だから路上生活でもいいんだ。俺は大丈夫だと言うんだけど、「痛い」のだけはもうダメなんですね。何とかしたいと思う。

 

杉本 なるほど。寒いのはまだ耐えられるということですか(笑)。

 

山内 痛いのはダメなんですかね。いやだから、「医療的アプローチ」なのかな?って(笑)。

 

杉本 (笑)そうなんですねえ。「痛いところ、ない?」ってね。腰が痛いって僕が会った人も言ってたんだけどなぁ。腰痛いの、病院行きましょう、みたいな。でもやはり最初は拒否するでしょうね。

 

山内 そうですよね。だから無料低額医療事業といって、勤医協のほうでやってるんですよね。つまり医療費がかからないわけですよ。でもそれは1ヶ月だったかな。1ヶ月間は有効なんですけど、治療すると言ってもそれ以上かかるとなると、要は無料低額の事業が終わるという話になるので。継続治療受けるなら生活保護を受けて下さいと。

 

杉本 なるほど。

 

山内 で、生活保護はちょっと、というので。何というんでしょうね。例えば足が痛いと。足の付け根が痛いんだといって、痛いので何とかしてくれというので連れて行くんですよ。で、連れてくとほかの検査もついでにしてくれる。そうするといろいろ出てくる。痛いのは関節炎だという話で、まず痛み止めの薬をもらう。でもあなたはほかにもヘルニアがあるようだとか、肺に影があるとか、不整脈だとかいろいろ出てくるわけですよ。でも本人は、「ここが直ったらもういい」となるんですね。でもほかにも悪いところが出てますよ、と。そんなの分かってるけど痛くないからいいと。で、治療するとなると、おそらく生保をもらわんといかんやろ、生保は嫌だから、この痛いのが直ったらとりあえずいい、と。医者から手術が必要だと言われたりするんだけれども、手術の意思はないですと。でもその人がまた痛くなって結局生保をもらう。だから「痛い」のばかりは仕様がない、となるんです。

 

杉本 (笑)ははは。

 

山内 (笑)。

 

杉本 いや、僕みたいなね。本当に気弱な人間ですぐヘタる人間はね。やっぱり全然ダメですね。できませんね。

 

山内 (笑)。

 

杉本 ははは。ひきこもり人間だもの。できるわけねえよな、という。

 

山内 (笑)いや、そう。だから何でしょう?北海道みたいな寒いところで何でだ?と普通は思いますよねえ。僕もこういうことですということは言えないですけど、意外と脱路上するときはスッと行く。逆にね。何で今まで頑張っていたんだろう?と。不思議なくらいです。

 

杉本 リミットみたいなものがきっとあるんでしょうね。その人にとってのね。まあこれは難しいことでしょうけど、路上生活のデッドラインは10年ですとか、そういう平均値とか出せる状況はあるのかしら?

 

山内 いま札幌で一番長い人、30年くらいやってる人いますよ。

 

杉本 30年!?(笑)

 

山内 それはまたちょっと違う感じですね(笑)。

 

杉本 で、おそらくね。これは間違いなくあると思うんですけど。話す人と、もう一切話さない人っているじゃないですか。

 

山内 そうですね。

 

杉本 もう超ベテランみたいな人にはもはや、という人っていますよね。人間社会から完全に……。

 

山内 そうね。

 

杉本 言い方悪いですけど。そういう感じの人って。もう人を寄せ付けないくらいのレベル、みたいな。この感覚って何なんでしょうね?例えが妙ですけど。この前西部邁が自殺しちゃったじゃないですか。何か自殺はしないといいますかね。でも状況的にはこれ、ほとんど自らをそっちの世界のほうに引き寄せちゃてるんじゃないか?みたいに見える。これは勝手な僕の想像であって、その人と話をしたわけじゃないから分からないですけど。ただおそらく、話す糸口もきっとなかなか難しいんじゃないかなと思うんですよね。その30年続けているという人は話すんですか?

 

山内 話します。メチャクチャ話します。

 

杉本 ああ、そうなんですか。

 

山内 でも同じようにもうひとり、僕がこの活動始めた時からいっさい喋らない人もいて。その人はもう、分かんないですね。大通公園で朝まわりみたいなことをやってた時代もあったんですよ。いまから15年くらい前ですけど。そのときその人、鳩食ってたんですよ。

 

杉本 ははははは(爆笑)

 

山内 生で鳩食ってて。

 

杉本 そんな(笑)。

 

山内 ええ~!?と思って。これはもう、ちょっと。で。ブリッジしてたんです。朝、大通公園で。

 

杉本 おお(笑)。

 

山内 大通公園で鳩食って。喋らない人で。「ロスケ」と呼ばれてるんですよ。通称「ロスケ」と。確かにちょっと彫りが深いというか外国人風でね。何かすごくて。そのあたりの人はさすがに何を考えてるのか分からない。

 

杉本 次元が違う(笑)

 

山内 だからまあ、いわゆる「こんなはずじゃなかった」「何とか生活を立て直したい」とか。そう言ってる人に対して何かできることはないかなというアプローチ。あるいは「いや、いいんだ俺は。好きでやってんだ」と言ってる人も本当にそうなんですか?という所で見ていく。そう言わないと保てないから言ってるわけで。本当に選択肢として脱路上があるならばそっちを取るという人に対するアプローチなので。僕らは。だからさっきの「まだ大丈夫」もその範疇なんです。

 

 

 

みんな根本では路上生活を脱したいと思っている

 

杉本 脱路上に行けるということに対するアプローチですよね。

 

山内 だから「ロスケ」さんに関してはもう、ちょっとわかんないですね。まあ、ちょっと「仙人」みたいな人も確かにいるのかも。

 

杉本 仙人。

 

山内 あの人が脱路上したいか?といったらちょっとやっぱり。

 

杉本 だから僕なんかはボランティアをやってないですから、路上を脱することを目指してるとは思えないように見える人ってやっぱり多いんですよね(苦笑)。

 

山内 (苦笑)。

 

杉本 僕は土曜日札幌駅から西口のはじまで地下通路通るんですけど、朝方、いつも秋口の終わりくらいまで階段の登り口そばのベンチに座ってうつむいている人がいました。声かけ慣れしてる人ならその人に声をかけるのは抵抗ないと思うんですけど、僕なんかは気になるけど声かけする自信ないですからね。さっきのロスケさんに至るともうそういうレベルじゃないでしょうね(笑)。

 

山内 そうですねえ。

 

杉本 絶対拒絶される。拒絶されることももちろんありますよね?

 

山内 ありますね。

 

杉本 声をかけても。無反応どころか、怒る人も。

 

山内 はい。

 

杉本 いるでしょうし。やっぱりそうするとあの、初めて夜回りなんか参加する人は怖いと思うと思うんですよね。怒鳴られたり。

 

山内 最初がそれだとそうでしょうね。ただやっぱり無視をするとか、怒鳴られたり、「いらない」と言われた人も続けていくと少しずつ話してくれるようになるんですよ。だからそれはもう時間かけていくしかないという風に理解して活動しているのですけれども。まあそれでも全然、という人ももちろんいますけどね。でも、それもずっとやっていくしかないよね、みたいなところですね。

 

杉本 そうなるとそこら辺まで行っちゃう人もレアケースですか?ロスケさんみたいな人は。

 

山内 そうですね。だけど目立つから。やっぱり何というんでしょう。そういう人がステレオタイプにされちゃうと困るなというか(笑)。そういう人はそうそういないんだよと。みんなやっぱり「嫌だな、こういう生活」と思いながらやっている。

 

杉本 うんうん。じゃあやっぱり「望んでやっている」という世間のイメージも間違いで、皆やっぱり国のお世話になるのは申し訳ないと思っている人が多いんですね?

 

山内 そう思います。すごくそういう風に思っていて。まあ国の世話になるのが申し訳ないのと、やっぱり大きいのは扶養照会ですね。家族親戚に連絡が行く。そこはすごく誤って捉えられているというか。

 

杉本 要はきつく世話しなさいと言われると思って……。

 

山内 そういう風に圧力がかかるんじゃないかと思っているんですね。そんなことはないよ、と言っても「いや……」と。

 

杉本 昔の生保のイメージですよね。かなり昔のね。だって僕だって親にね、「アンタがそんなだったら」ってね。あれは振り返って良くない教育だと思います。親が子どもにしつけするときに「そんなことやってたらホームレスになる、私たちが恥をかく」ってそういう風な言い方で脅かすということは良くないですよね。それをまともに受け止めちゃう人もいたかもしれないという。

 

山内 「ああはなりたくない」みたいなものってあるじゃないですか。

 

杉本 ええ、確かに。

 

山内 それはそれでもいいというか。確かに「ああなりたい」じゃ困るんだよなというのはあるんですけど、でも「どうしてそうなってしまったか」ということというのはすごく僕もそこについて語るのは複雑だなと思います。やっぱり路上生活に至るのに本人の責任に帰せない要因がある。でも同時に本人がここでこうしておけば防げたかも?という所もあるので。それはやっぱり両面があるから。う~ん。本人はね。「俺が悪いんだ」って確かに思っているし、実際だらしなかったんだと。そういう風に言います。だから何というのかな。「ああはなりたくない」になっちゃっているということを「引き受けてる」ということ。まあ引き受けてやってるわけですけど、その惨めさというか、何というんでしょうね?親が子どもに「ああいう風になっちゃうよ」という時にどういう意味合いでそれを伝えているのか。路上生活は嫌だっていうものも、その奥底にあるその人への哀しみみたいなもの。そこはやっぱり「あの人は気の毒だな」という風に、「気の毒な事情があるんだ」と思う感覚も「込み」で伝えるなら伝えて欲しい。難しいでしょうけど。本当に「ああはなりたくない」という意味がどういう意味なのか、ということを考えて。

 

杉本 なるほど。やっぱり教育は大事ですよね。

 

 

 

労福会に惹きつけられる理由

 

杉本 そもそも「労働と福祉を考える会」は学生さんとの協同で始まってますよね。学生さんのボランティアに支えられてる部分があると思うんですけど、やっぱり学生さんはそういう意識が高い人たちが多いんですか?北大生ですよね。

 

山内 そうですね。意識が高いというか、変わってると思いますよ。ははは(笑)。

 

杉本 どういう心境で参加される人がいるのでしょうか。

 

山内 いや、これは「知りたい」ですね。

 

杉本 ああ~。やっぱりそうなんですか。大瀧さんもそうだったみたいですね。

 

山内 冬、どうやってんだ?っていう。大瀧くんもそうだと思う。で、もちろん可哀想というか、「支援したい」という動機の人もいるんですけど、続かないですね、そういう人は(笑)。

 

杉本 難しそうですもんね。

 

山内 はははははは(笑)。

 

杉本 ねえ?普通の意味の障がいなどを考えるよりは。

 

山内 「知りたい」と言ってる人は、やっていくうちにやっぱり支援に入らざるを得ないという風になっていくんじゃないのかな。

 

杉本 やっぱり「疑問」なんでしょうね。なぜこんな、まあ世の中に対する矛盾みたいなこととクロスさせながら。

 

山内 そうですね。そうです。まあそこに絡めている場合もあるし、単純に「ホームレス支援をしている学生ってどんな人たちなの?」っていう動機でもあったり(笑)。

 

杉本 ああ~!!

 

山内 俺らとおんなじ学生で支援してるのってどんな奴なんだ?っていう理由で。

 

杉本 ほお~。

 

山内 そういう人たちのほうが面白いなと思っちゃいますね。

 

杉本 へえ~、そうですか。興味本位のほうがまだしもいい、面白いんですかね。まあ、興味だけじゃ良くないか(笑)。

 

山内 いや、でもそうだと思いますよ。もともと「労福会」自体もそういう始まりの仕方なんですよね。

 

杉本 なるほど、そうですか。いや~、なかなか奥行きの深そうなディープな世界だと思うんですけど。

 

山内 ははは(笑)

 

杉本 もしかしたら友だちがやってるんで「へえ~」と思って付き合ってみようか、みたいな?

 

山内 はい。

 

杉本 入り口的には。

 

山内 そうですね。

 

杉本 そうしたらハマっちゃったとか?

 

山内 うん。最近はでも、あまりハマる人がいなくて。

 

杉本 そうでしょうねえ。

 

山内 はははははは(爆笑)。

 

杉本 いや、僕、今の時代若い人がそういうことにハマるとはちょっと……。

 

山内 いやあ、ないですよね。だから学生が務めてくれている事務局長がいないときもあったんです。それで私がピンチヒッターみたいになって。で、今年また出てきてくれて。ただ「来年また居ないなぁ」みたいになっていて。

 

杉本 いまは事務局長さんはいらっしゃるんですか?

 

山内 いまはいるんです。文学部の3年生ですね。

 

杉本 今度4年生になると就活が出てくる。

 

山内 いちおう1年交替という仕組みなので。

 

杉本 おそらく学生の渦の中に埋もれるタイプの人は少ないでしょうね。

 

山内 そうですねえ。

 

杉本 ある種、尖っているというのか(笑)。

 

山内 う~ん。

 

杉本 でもマイノリティかもしれないけれども、そういう人たちがいてくれるのは本当にね。

 

山内 いや、そうだと思います。本当にね。こんな時代だからこそ。

 

杉本 そうです、そうだと思います、本当に。いや、僕が言うべきことじゃないですけど、いろんな、特に究極はホームレスの人ですけど、「ああはなりたくない」って普通の人は簡単に言い切ってしまうものにあえて注目してくれる人がいなかったら本当にそういう社会になっちゃいますもんね。

 

山内 う~ん。

 

杉本 切り捨ててしまうというか。人間が人間をね。

 

山内 そうですね。

 

杉本 想像力だけは失いたくないなとは思いますよね。だから親御さんもそういう人たちに対する想像力を植え付ける。植え付けるというか(笑)。せめて先ほどね、いろいろ事情があって、そういうこともあるんだよということが教えとしては大切なのかなと思うんですけどね。

 

山内 そういう、親が子どもに、みたいな。親御さんにそういう意識持ってもらうために何をするか考えなくちゃいけないというか。それは「労福会」という支援する側がやれる範囲になっちゃうけれども。どうやったらわかってもらえるのかな?みたいな。

 

杉本 そういう意味では「子ども食堂」みたいな所で子どものためにご飯作って笑顔を見るのがうれしいくらいなボランティアみたいなものでも十分意味はあるという風には言えましょうね。路上支援は相当コアな支援活動だとは思うので。普通の人にはなかなかちょっと……。

 

 

 

見えづらく、シリアスになってきた支援内容

 

山内 最近ボランティアの人手不足も納得がいくといいますか、路上生活も自立支援が出てきたおかげで家はあるんだけれども、そういう人たちへの支援が見えずらくなってきたと思います。前は炊き出しとか、周りで路上生活してて、声をかけたら何とかして欲しいんだ、困ってるんだという所から支援が始まったんですよね。「労福携帯」と言って、会の携帯電話があるんですよ。で、連絡用とあとは緊急連絡先みたいなものがあるんですね。いままではそんなにかかってくることがなかったんですけど、今年はすごくかかってきて。それも旦那と離婚して札幌に出てきたいんだけれどもどうしたらいい?とか、父親と一緒に暮らしてるんだけれども折り合いが悪くてとか、元々やくざの組員で前科三犯の人の話とか、こんなケースが学生が持っている携帯にガンガン入るんですよ。

 

杉本 あ、学生さんが持ってるんですか?

 

山内 学生が持てるようにしてて、基本的に事務局長が連絡用兼、まあ相談が入ってきたら、みんなで相談して誰か生保の同伴ができる人につなげるようにしてあるんです。でもこの間、けっこう大変な生活相談がぽろぽろあって、今年になってザーッと入って来てる。いまは僕が持ってるんですよ。

 

杉本 そうですよね。そういう相談はさすがに学生さんには無理ですよね。

 

山内 そうなんです。ですからいわゆる不正受給がにおうような人からの相談とか。でもそれは学生さんたちに元々あった「札幌で路上生活。なぜ?」というポジティブな疑問が、「え?現実はこっちなの?」と。まあ揺らぐのは全然いいんだけど、内容が重すぎる。かつ、やっぱり際限なく、所・時間構わず何回も電話かかってきちゃうと、これはもうボランティアの範囲を完全に越えている。そうなると学生メンバーも困っている人たちが実際いるんだというのは分かるけれども、じゃあこれを友だちを誘って労福会を一緒にやろうよとなるかと言ったら、普通そうは言えないなという風になってきているんですよね。こんなに大変だとは思わなかった、みたいな形で。

 

杉本 元々持っているイメージと相当違ってきているということなんでしょうね。

 

山内 そうそう。そうなんですよ。だからホームレス、路上生活をこの札幌という玄関口で受け止めるんだという話だと思っていたら、何か入れ墨のすごい人が、みたいな。

 

杉本 う~ん。ディープな生活問題がドンといきなり。

 

山内 まあ「労働と福祉を考える会」なので、別にホームレスに特化してはいないんですよ、という話はしてますけど、でもそれでもなんで今年こんなに増えたんだろう?とちょっと分からないくらいなんです。これまでどこかで相談受けていたのか分からないけど。

 

杉本 2017年度と言うことですね。

 

山内 おそらくだから、今年の総会ではその話が(苦笑)。ははは、ははは。

 

杉本 なるほどね。そうすると私、最新情報を聞いた、ということになりますね。あまりダイレクトには書きにくい話かもしれませんが。

 

山内 (笑)でも、「ジョイン」。あそこに流す、というのが基本になってるんですけどね。ただ生活保護の人は流せないので、そこはどうするかなんですけど。でもやはり「ジョイン」で相当路上に出るのを食い止めてるだろうなというのはありますから。だからすごく機能してるんだろうなと思いますよ。あそこがなかったらもっとホームレスの数、増えているんじゃないのかな。

 

杉本 そうですか。そうすると緊急相談は「ジョイン」が頑張ってるということになりますか。

 

山内 そうだと思います。

 

杉本 あとは無いのかなあ?生活相談をやってるところ。

 

山内 あるにはあるんでしょうけどね。

 

杉本 「寄り添いホットライン」。24時間対応の。ああいう電話相談はあるでしょうけど。

 

山内 司法書士会とか。弁護士会がやったり。

 

杉本 司法書士会とも接点があるんですね。何で司法書士会は頑張ってくれるんでしょう?

 

山内 「労福」のメンバーの中に司法書士のかたがいて。

 

杉本 あ、そうなんですか。

 

山内 もう10年以上かかわっているのかな。その人が窓口みたいになって司法書士会でも困窮者支援部会みたいなのがあって。で、そことタイアップしてるんです。

 

杉本 志のある司法書士さんがいるんですね。

 

山内 そうですね。ちょうど今週の土曜日に司法書士会の人と炊き出しをやるんです。

 

杉本 でもそう考えると、いかにも私、観念的というか。現実対応ということになると相当地を這うような世界ですね(笑)。

 

山内 そうですねえ。

 

杉本 う~ん。学生さんも大変だ。自分の生活もあるし。ねえ?北大ですから。勉強もあるでしょうし。

 

山内 そうですねえ。いやあ数年前ですけど、「ああ、なるほどな」と思ったのは、それこそ総会資料最後の『私と労福会』に書いてあった文章なんですが、生活保護の申請に行って、まあうまく行かんかったと。で、残念でしたねと言って別れたあと、大学の講義を受けるために学校に戻っていくとものすごく胸が苦しくなった。だから片っぽで何とかしてあげたいと生活保護申請に行ったけど、「あなたもらえません」と言われちゃった。で、本人はすごく肩を落として。でも「ありがとうございました」なんて言われたりして。私、役に立たなかったなって思って大学のキャンパスに入るとそこは大学生活をみんな謳歌していて、「何じゃこりゃ?」と思ったと。だからそうだよね、と思いましたよね。やっぱり。

 

杉本 あの、福祉の専門にしている学部でいえば北星大学とか、人文学部で言えば札幌学院大学とかあるわけですけど。北大がこれだけ頑張っている、学生が頑張っているのは何なんでしょう?

 

山内 何なんですかねえ?

 

杉本 確かに学生全体から見れば相対的に北大生は学生数自体が多いでしょうけれども。この大学(札幌国際大学)では先生は短大のほうを教えているんでしたか?

 

山内 短大です。短大生ではいないですね(笑)。

 

杉本 短大は忙しいでしょうしね。

 

山内 忙しいです。

 

杉本 2年で卒業しなければいけないわけですからね。いや、僕は先ほどのお話、本当にそうだと思います。北大は幅があるでしょうから。一流企業目指して頑張っている人もいるでしょうし、まあ、デモをする人も()

 

山内 北星大の学生さんも一時期いた時代もあったんですけど。炊き出しとか、夜回りなんかだと一生懸命やってくれるんですね。

 

杉本 あ、そうですか。

 

山内 ただやっぱり社会福祉士とか精神保健福祉士とかの資格をとる授業を履修してると実習とかがあって忙しいんですよ。だから急の、生活保護の申請同行で月曜の9時に区役所集合なんかだと授業あるから行けないです、になっちゃう。その点では北大の文系の暇そうな人が自然と(笑)。

 

杉本 北大はまだそういう文化というか、余裕のある学生さんはいますか?

 

山内 う~ん、まあ。そうですね。文系だと3年生とかになればだいぶコマ数が減ってくるのかな?ちょっと最近分かんないですけど、でも動く子はそうですね。

 

杉本 へえ~。すごいですね。頼りになるなあ。まだ北大はそういう余裕があるのかな。

 

山内 余裕……。いや、だから少ないですよ(笑)。来年はなり手がいないかもしれないわけで(笑)。

 

杉本 ああそうか。そういう話でもありますもんね。いま言われた今年のような形で事務局長さんを引き受けて下さいとは言いにくいでしょうね。

 

山内 いや。本当にそうなんです。

 

杉本 生活保護の人まで受けつけなくちゃいけないということになれば。

 

山内 それは本当にそうです。

 

杉本 よほど志が高い学生さんじゃないと。

 

山内 うん。なのでね。ちょっと現時点では来年度めぼしい人、見当たらないんです。

 

杉本 そうすると学生さんのボランティアさんは引き続きいるでしょうから、そういう生活問題のかたたちはやっぱり先生が引き受けて、みたいな?

 

山内 う~ん。そうですね。で、フル往来で動ける人とか。やりたい人みたいなことになってしまう(笑)

 

 

 

無料低額医療事業―無料低額診療事業とは、低所得者などに医療機関が無料または低額な料金によって診療を行う事業。厚生労働省は、「低所得者」「要保護者」「ホームレス」「DV被害者」「人身取引被害者」などの生計困難者が無料低額診療の対象と説明している。無料低額診療事業を実施している北海道勤労者医療協会(勤医協)は、窓口での一部負担金免除の基準として、(1)全額免除は1ヶ月の収入が生活保護基準の概ね120%以下と内規で定め、(2)患者からの申し出や患者の生活困窮を職員が知った場合に医療相談員が面談し、公的制度や社会資源の活用の可能性を検討したうえで、適合を判定する。また、この制度の適用は生活が改善するまでの一時的な措置であり、無料診療の場合は、健康保険加入または、生活保護開始までの原則1ヶ月、最大3ヶ月(一部負担の全額減免と一部免除は6ヶ月)を基準に運用している。(全日本民医連ホームページより)

 

 

 

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                       「労福会」の成り立ち