新ひきこもりについて考える会

 

 

 

杉本:前段が長くなりましたけど、それで質問なんですが、勝山さんはいつくらいから「新ひきこもりについて考える会」とかかわりをもったんですか?

 

勝山:2006年くらいですかね。たぶん。

 

杉本:ああ。そうするともう10年近くになりますか。

 

勝山:そう10年くらい。それくらいになりますね。でも最初の1年半は何もしゃべらなかったんですよ。

 

杉本:え? 勝山さんが?

 

勝山:ええ。

 

杉本:へえ~。当時の参加者は多かったんですか?

 

勝山:いや。20人ぐらいだったと思いますよ。

 

杉本:ああ~。でもそこそこですよね。

 

勝山:丁度いい数じゃないですかね。

 

杉本:観察していた感じなんですか?

 

勝山:いやあもう、溶け込めなくて。そもそも自助グループみたいなものに行ったことがなかったし。そういうのは嫌だ、そこまで堕ちたくない、と思っていたんですよ。

 

杉本:(苦笑)。ちょっと私も共感できる気がします。

 

勝山:そこに行かないのがプライド、みたいのがね。

 

杉本:ええ。「さすがにねえ」みたいのがね。うん、わかります。

 

勝山:でも、いろいろ調子に乗って、誰からも相手にされなくなった時期があってね。甥っ子とのポケモンカードをやるだけの人生で、「このままでいいのか?」というときに、「ひきこもりからやり直そう」と思って。斉藤さんというかたがいるんですが、その人が「考える会」の世話人をやっていた関係で、ときどき「来ませんか」というメールをくれたんですよ。それで考える会を知って、行ったんです。でもなじめなかったですね。

 

杉本:重々しかったんですか? 当時は。

 

勝山:ほら、もうすでにグループができているなかに入っていくわけですから。たいへんです。

 

杉本:そうか。常連さんが確定しているわけですね。新人さんは入りにくいみたいな。

 

勝山:そのなかに、微妙な感じの私が行くんです。

 

杉本:うん、うん。

 

勝山:前の黄色い本(『ひきこもりカレンダー』)を出してから何年かしてから行くわけじゃないですか?

 

杉本:ひきこもりカレンダーから5~6年。

 

勝山:そう。著者を名乗るには少し古臭いんですよ。でも黙っているにはちょっとヘンだという。

 

杉本:勝山さんを知っている人もいる感じなんですか?

 

勝山:斉藤さんなんかは知っているわけですよね。

 

杉本:ああ。前に本を出したことをね。

 

勝山:そうそう。でも自己紹介で著者である、と話を切りだすのは恥ずかしい。聞かれてもないのに名乗るほどのものでもないから。

 

杉本:俺、きっとしゃべりそう(笑)。

 

勝山:しゃべれないですよ(笑)。杉本さんも今ならしゃべれるけど、6年後くらいにこの本の著者の杉本ですと言えるかといったら、なかなか言いづらいと思いますよ。

 

杉本:なるほど。確かにそうかもしれないですね。

 

勝山:私は見栄っぱりだし、なかなかね。恥ずかしいのと、初めてで緊張してるのとで。あと、会議室みたいなところで話すわけじゃないですか?

 

杉本:ああ~。

 

勝山:うん。だからすごく話しづらくて。

 

杉本:初日の例会の感じですね。あれは確かにそうですね。札幌の自助会もああいう感じなんです。ですから、ちょと意外というか、割とフォーマルにやってるんだなあと思いました。

 

勝山:そうそう。あんな話しづらいのもないなあと思ってね。

 

杉本:ふふふ。江別に来たとき言ってましたもんね。テーブルで囲んで間に空洞があると自分の声がそこに落っこちるようだって。

 

勝山:落ちるんですよ(笑)。でも、いまだに改革されてない、現状維持です。積極的に改革にかかわるほどの情熱もないですしね。

 

杉本:うんうん。

 

勝山:自分の会じゃないから。

 

杉本:そうか。そうするとその頃、始め直してみようと思うときに別の行き場所はなかったんですか? その、2006年くらいまでの4~5年は。

 

勝山:思いつかなかったですねえ。考える会に行き始めた頃にブログを始めたんですよ。

 

杉本:そうですよね! 2006年からですよね。

 

勝山:まったく一緒。2006年は「ゼロからやり直そうイヤー」です。

 

杉本:じゃあ文字通りもう一回ひきこもりを自分のアイデンティティにして、「やろう」と思ったんですか。

 

勝山:そう。次の本を書くぞ、という気持ちがなくなったんですよね。

 

杉本:う~ん、なかなか。勇気がいるというか。それはそこに思い至ったのはなかなか「底つき」感的な思いはあったんですか?

 

勝山:まあ~、ちょっとね。調子に乗ってしまいましたからね。

 

杉本:そういう時期もあったということなんですね。

 

勝山:ありました、本当にね。それだけはもう気をつけないと。

 

杉本:で、当面は黙って。水が合わなかったらもうやめようか、と思ったりしてたんですか?

 

勝山:私は全然なじめなかったのですが、でもとにかく長くいようとしました。ひと言もしゃべれなくても、とにかく最後までいようというのが自分のノルマだったんです。

 

杉本:へえ~。

 

勝山:あそこで1年半いて考える会にちょっとなじめるようになったというのが、自分の居場所の基準になったんですよね。

 

杉本:ふ~ん。

 

勝山;もうどんななじめない場でも、1年半いれば何とかなる、という。それが私のひとつの基準です。

 

杉本:なるほどそうですか。例えばなじめるようになったきっかけとかはなかったですか?

 

勝山:きっかけというか、相手次第ですかね。相手が自分の顔と名前を覚えてくれればなんとかなる。

 

杉本:1年半もいりゃあ、それは覚えてくれるでしょう? さすがに。

 

勝山:そういうことですよ。そうして話しかけてくれればね。こっちはもう、何とかなりますから。

 

杉本:そうでしょうね。もともとしゃべれるでしょうから。

 

勝山:でもそうなるまで1年半くらい。顔と名前を覚えるにはそれくらい時間はかかるんです。

 

杉本:勝山さんが1年半もしゃべらないでいたというのもちょっと信じられないような話ですね。

 

勝山:そんなもんじゃないですかね? ふつう最初からはなじめないですよ。恥ずかしいしですしね。

 

杉本:僕、しゃべってたかな?まあ人がそんな多くないということもあったけど...

 

勝山:(笑)空気も読まないといけないじゃないですか?

 

杉本:そうなんですよね~。それはありますね。今でもやっぱりありますんでね。

 

勝山:1年半通って、会の雰囲気を見て、勝山色を「これくらい出しても大丈夫」というのも分かってくるわけじゃないですか。

 

杉本:うん、うん。

 

勝山: なかには冗談が全く通じない人もいますからね。

 

杉本:そうそう。冗談のつもりで言っても、受けとめる人によっては・・・みたいなこともありますよね。

 

勝山:「考える会」には、変なのがいたし。

 

杉本:あ、そうなんだ。

 

勝山:いばってる親もいたんですよ。ひきこもっている子どもの悪口を言ってるようなね。

 

杉本:そうか~。

 

勝山:「この俺がいるのに、ぬけぬけとこんなこと言いやがって」みたいなやつらがいたんです。

 

杉本:なるほど。いろいろ観察するというか、勉強になる時期だったんですね。「ああ~。これはまずいだろう」みたいな。

 

勝山:あはは(笑)。悪いとは思わないけれども、このなかに私の居場所があるのかな? ポジションがあるのかな、とは思いました。

 

杉本:(笑)ああ~。

 

歪んだ(?)正義感

 

 

 

勝山:で、こんなのをのさぼらせておいてはいけないなあ、ということに。

 

杉本:ははははは(笑)

 

勝山:歪んだ正義感がありましたからね(笑)。

 

杉本:(笑)いや、いまや正しい正義感になってしまったというかね。

 

勝山:いやあ、歪んでますよ。だって、彼らの居場所だったわけだからね。

 

杉本:ああ~。

 

勝山:子どもの悪口をいって発散させるような、親の居場所でもあったんですよ。彼らが来てのびのびと悪口を言う、いかがなものかと(笑)

 

杉本:では、1年半くらい経ったあたりから勝山色も出して、みたいな感じに?

 

勝山:でも、なかなかね。歪んだ正義感ですね。それでも勝山色を出さずにいられなくなったのが1年半後くらいですね。

 

杉本:何というか、正義の阿修羅が。

 

勝山:正義が後押しした。勇気を与えてくれたんですよ。それで例会みたいなところでも発言するようになったんですね。

 

杉本:正論をね。

 

勝山:世論を風を受けてね。

 

杉本:うん。そうすると、林さんみたいな人は「うんうんうん」みたいな感じに?

 

勝山:でもね。林さんは来てなかったの。

 

杉本:あ! そうなんだ。だってあのかたは。あとでお礼のメールを送った際に、もう関わりは不登校時代を含めて、30年近くになりますと。

 

勝山:林さんは考える会本体の方には来なくて、杉本さんの本を取り上げた横浜の読書会があるじゃないですか? そちらの方にだけ出てたんですよ。

 

杉本:あ、そうなんですか。何かね。本が好きそうな・・・。

 

勝山:そうそう。古本屋やってるくらいだから。

 

杉本:そうだよね。林さんが一番いいポイントついてきたもんね。

 

勝山:林さんが、今いちばん活動的ですね。UX会議も、またやるっていってましたし。

 

杉本:そのようですね。2回目が4月にあるとか。丸山さんのほうにも謝罪のメールをしまして、そこで知りました。丸山さんも本当に優しくてですね。もう慈愛に溢れる人ばかりで。

 

勝山:「王者」に対しての当然の礼儀ですよ。

 

杉本:さっきからそれ、やめてよ(笑)。

 

勝山:名人なんて、王者の前ではしょせん豆つぶでしかない。

 

杉本:そんな(笑)。

 

勝山:東京⇔札幌往復して、真っ白にフォーマットされたデータ作る。この王者の技に感服しました。

 

杉本:(笑いすぎて涙)いや、あの、ごめんなさい。また話忘れちゃうからさ(笑)。それで丸山さんなんだけど。丸山さんは、ちょっとアナログ派なんで、ちょっとスカイプはできませんと。ただ、湘南ユースファクトリーのほうでITとか、メディアのほうの専門のグループがあるので、そちらの人のほうに声をかけて頼んでみましょうか? とわざわざ言ってくれたんですよ。

 

 

 

湘南ユースファクトリー

 

 

 

勝山:丸山さんはパソコンが苦手なんですよ。でも湘南ユースファクトリーの会議ではスカイプを使うんで、たぶんその時にノートパソコンを用意してやることになるんじゃないですかね。湘南ユースファクトリーの例会のあととか、そういう時間を利用して多分やることになると思います。

 

杉本:湘南ユースファクトリーというのも例会をやってるんですか。

 

勝山:やってるんですよ。いちおうNPO法人になるのを目指してるんで、そのための準備のための話し合いだったり、あと「ひき☆スタ」というひきこもりの支援サイトがあるんですけど、そのお手伝いもしてるんです。その話し合いをしたりしています。

 

杉本:まあ一種の会議みたいなものも?

 

勝山:そう会議です。会議と交流会を兼ねてるんです。

 

杉本:僕も「UX会議」のホームページとか最近見るようになったんですけど、すごくあれは具体的な議事録みたいな感じであがってますけど、そういう感じでユースファクトリーもまあ、集まっては会議やって、ということなんですね。

 

勝山:会議というか、「おしゃべり」ですけどね。

 

杉本:おしゃべりね。いやでも、大事なポイントだと思うんですよね、それね。

 

勝山:みんな話し好きだから。集まるだけで何にもしないんですよ。もう3年くらいかな。

 

杉本:勝山さんも名前連ねてますよね。理事でしたっけ?

 

勝山:ええ。そうです。

 

杉本:そちらのほうも行ってるんですね? 

 

勝山:そうです。

 

杉本:じゃ、ユースファクトリーがあり、新ひきこもりについて考える会があり、そしていけふくろうの会。ここら辺が一応常連で?

 

勝山:そうですね。その三つですね。

 

杉本:なるほど。あ、じゃあ林さんは、のちのち「考える会」の例会の方にも顔を出すようになったんですね?

 

勝山:最近「新ひきこもりについて考える会」本体のほうの世話人にもなったんですよ。

 

杉本:最近なんですね。それにしてはもはや中心で仕切ってましたね。

 

勝山:中身がある人ですからね。

 

杉本:そう、確かに。何か硬軟両用、包含してるぞ、みたいな。僕はてっきり支援の人かと。いや、でも何かの情報でひきこもっていた時期もある、と事前に知っていたかな?

 

勝山:この本(『私がひきこもった理由』)。

 

杉本:ああ~!はいはい。勝山さんが単書を出す前、一番最初にインタビューが掲載された本ですね。

 

勝山:そうです。この本に林さんもインタビューを受けているんです。

 

杉本:あ、そうなのか~。

 

勝山:最後の人が林さんなんです。

 

杉本:へえ~。最後というのは、やはり勝山さんと並んでインパクトの大きいインタビューだったんでしょうか。

 

勝山そうですねえ。あと、「ロフトプラスワン」のイベントに一緒に参加してるんですよ。

 

杉本:林さんも?

 

勝山:ふたりとも。

 

杉本:へえ~。そうかあ。僕はもう、もはやてっきり支援者なのかなと思いましたよ。

 

勝山:いや、違うんです。元当事者なんです。

 

杉本:うん。すごいなあ。読書会もそうだったけど、上手いところでちゃんと全員にね。喋れるような司会をしていて。いや、本当にこの林さんの存在は大きいんだろうなあという風に思いましたね。あと不登校の親御さんだった北村さん?

 

勝山:そう、北村さんです。読書会は北村さんがいないと成り立たないですね。会場を押さえたり、細かい連絡など、事務的な作業をやってくれているんです。

 

杉本:なるほど、そっか~。やはり林さんがいて、北村さんがいて、勝山さんがいて、丸山さんがいて。まあ、僕がお会いしたところでは近藤さんという若い方がいて。

 

勝山:ひきこもりオールスターですよ。

 

杉本:そうですよね。これだけでもずいぶん「ああ~。空気感がいいなあ」って。まあ、世間的には「いかがなものか」ということかもしれませんけど(笑)。僕なんかにとってみるとすごく心地がいいというか。だからつい喋りすぎちゃいましたね。

 

勝山:そんなことはない。

 

杉本:自分が例会の会場に入ったとき、勝山さんは確か生活保護について話されてましたね。勝山さんは2006年から1年半たってからは、ああいう感じでもう、自分の色を出し始めたわけですね?

 

勝山:まあでも、勝山色を出すのも申し訳ないな、という気持ちもあるんでね。

 

杉本:うん。でもいいいんじゃないですかね? 僕なんかはイベントで知っている勝山さんなので。やはりちょっとひきこもり界のスターみたいなね。イメージがありまして。特に札幌ですから、あのような場で一参加者の勝山さんを見るというのも新鮮で面白い、というのも失礼だけど。まあ林さんなんかが中心にいて、勝山さんがこっちで自分の見解を話してるみたいなね。ああいう場を見られたのも貴重な体験だと思いました。で、丸山さんがこちら側に座っておられるし。うん。様ざまに個性があるな、と(笑)。

 

勝山:まあ、一参加者としてね。

 

杉本:丸山さんも長いんですか?

 

勝山:丸山さんも長いですけど、毎回遅刻して来ますからね。

 

杉本:そうなんですか。

 

勝山:丸山さんは忙しいんですよ。カバン持ってチラシ配ったり、いろんな所に行くんでね。ひきこもりに関する集まりがいくつかあったりしたときに、丸山さんは普通に掛け持ちしますから。まあそれでも、丸山さんはほとんど皆勤賞に近いくらい出てると思いますね。

 

杉本:大事な場所になってるんですね、間違いなくね。確か丸山さんのメルマガというのもかなり活動が長いんですよね?

 

勝山:長いですね。

 

杉本:2000年代の初めからやっているとか。

 

勝山:もう15年くらいかな。

 

杉本:勝山さんが最初の本を出した頃にもう同時期に丸山さんも活動をされていた?

 

勝山:そうです。あの頃にメルマガをはじめていて。

 

杉本:メルマガをしていて、その延長で本が出た。

 

勝山:それが本になったんですね。

 

杉本:うん。いや~すごいな。横浜。う~ん、人材の宝庫。

 

勝山:ははは(笑)。

 

 

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